薬剤師の職能拡大に協力するためにやっているわけじゃない

今日は病棟を簡単にラウンドし、退院調整、指示出しなどを行ったあと、朝一番で、介護施設に訪問診療におうかがいしました。
 
10名ぐらいを診察させていただきながら、PEG交換を行ったり、今後の方針を考えたり。
チームは、医師、施設看護師、病院看護師、病院薬剤師、薬局薬剤師、施設ヘルパーというメンバーです。
 
薬剤投与の方法、剤形の問題、減薬・追加処方時の日数調整など薬学的管理に薬剤師が関わるポイントはたくさんあります。私が大切にというか、有り難く思っているのは、「で、先生的にはどう思うの?」ということを、薬剤師にも聞くことです。
もちろん、施設のスタッフにも聞きます。処方に迷ったときには、「で、今の調子は結果的にどう?」ときいて、最終決定の材料にしますが、薬剤師さんにはもっと直接的に関わる内容を聞くことができます。
 
私は薬剤師の職能拡大に協力するためにやっているわけではありません。それは、目的ではなく結果的にそう見えるだけです。
 
私がやっているのは、新しい治療戦略を組み立てていることだと思います。自分の処方を決める前に、調剤した薬剤師の見立てを、毎日の生活をみている患者さんのご家族や、ヘルパーさん、看護師さんの話を聞くことと同様に、薬剤師の見立てを聞くというのは、自分の患者さんの状態を良くする上で、極めて重要だと感じています。
だから、自分の訪問診療や病棟回診において、薬剤師さんと一緒に回るのは、とりもなおさず、私にとって新しい治療戦略だと感じているからです。新しい治療戦略が有効かどうかは、きちんと評価をしてしかるべき場所で発表する必要がある。これは、内視鏡外科手術に取り組んだ時にも、移植医療が始まった時にも行われている、医療としての当たり前のあり方です。
そういうつもりで、医師には話をさせていただいています。
これは、結果的に、薬剤師の職能拡大に協力しているように見えるかも知れません。しかし、それは、結果であり目的ではありません。
結果的にそうなるのか、それを目的として取り組むのか。似ているようで、全然違うなぁと改めて思います。
訪問診療を終えて、病院に戻りながら、改めてそう思いました。

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コメント: 1
  • #1

    藤田俊生 (木曜日, 27 10月 2016 17:05)

    先生は薬局に戻られて、あまりにも薬剤師が医薬品の取り扱いだけに特化した(例えば迅速正確な調剤や薬品管理)物中心の業務に明け暮れているのを見られて、不足している医学的臨床知識の必要性とさらには物中心の業務だけでなく、お薬を出した後のフォローや口頭での人を対象とした専門知識を活用といった人と関わる業務をもっと充実すべきだとのご意見だったと思います。そのために、必要な臨床医学知識やバイタルサイン評価能を身に着ける方向で指導されてこられました。昔、病棟の回診に同行させて戴いたことがありましたが、医師が意見を求められたとき、適格な回答は常時患者さんと接して業務を行っている看護師さんから出るケースが多く、役立つ臨床薬学・医学知識の必要性を痛感しました。今、講演会などで演者の医師と薬物療法に関する意見を交わしている様子をみて、随分臨床薬剤師が育ってきているなと感じています。具体的には、TDM、副作用・相互作用でこれらは分業当時からチェックすべき7項目に入っていましたが、バイタルサイン評価まではありませんでしたね。今の大病院の処方箋には臨床検査値が記載されているものが増えています。流れは先生の提唱される方向には行っているように思います。